漆は日本の伝統的な塗料の一つです。仕上がってしまえば化学的にとても安定しているので薬剤やアルコールなどが付着しても剥がれませんし、塗膜が強固なので長時間木部を保護できます。ここでは拭き漆(擦り漆)の施工について説明します。
1. 塗装の下地作りをします。漆を塗るときは木賊(砥草:トクサ) で下地を仕上げると塗り上がりが綺麗ですので、今回は木賊を使います。まず木賊の茎をしばらく水に浸します。
2. 漆が付着して欲しくない部分をマスキングします。
3. 漆刷毛を使ってテレピン油を少し加えて希釈した生漆を塗ります。
4. 漆が乾かないうちに布で擦るようにして付着している漆を拭き取り、微量の漆を木部に付着させて残します。凹んだところなどに漆が多く残ってしまいがちですので細かな部分もしっかり拭き取ります。
5. 漆の拭き取りが終わったところ。
漆を乾燥させるために漆風呂に入れて1日程度放置します。
ギターは湿気を嫌う楽器ですので、通常の漆風呂(密閉され埃が立ちにくく、温度が25度前後、湿度が65%前後に維持された容器や部屋など)ではギターに悪影響が出ることがあります。 当工房では常温でも乾き易い漆を仕入れて使用し、温度と湿度は控えめにして乾燥させています。
6. 望む艶が出るまで3から5を繰り返します。
温度や湿度によって漆の乾燥がうまく行かない場合もありますが、そのときはいったん半乾きの漆を綺麗に拭き取ってやり直します。
7. サンドペーパーや炭(漆研磨用に売られているもの)を使って水研ぎをし、コンパウンドや鹿角粉(伝統的な研磨剤)を油で溶いたもので研磨して仕上がりです。
完成したギター
このギターの場合は3から5を20回ほど繰り返しています。